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K-surf 杉本さん(岩手)「汗と全部が入っている砂浜」 サーファーが夢に描いていた光景 浪板海岸12年ぶり海開き

再生工事が終了し12年ぶりの海開きを迎えました。
この日を待ち望んでいた1人のサーファーの思いを取材しました。

「汗と全部が入っている砂浜」 サーファーが夢に描いていた光景 浪板海岸12年ぶり海開き<岩手県> (22/07/29 07:00)




東日本大震災で砂浜が消失していた大槌町の浪板海岸。
大量の砂を投入する再生工事を経て2022年7月23日、12年ぶりの海開きを迎えました。
最初の土日は天気に恵まれなかったにも関わらず、家族連れなど約200人が来場。
この日を待ち望んでいた人たちの笑顔であふれました。


この海開きを一際特別な思いで迎えた人がいました。


プロサーファー 杉本浩さん
「良い光景。やっぱりすごくグッと来る。これを待っていた」


県内ただ一人のプロサーファー・杉本浩さん(54)は、砂浜再生を誰よりも願ってきました。
隣の釜石市出身の杉本さん、震災前の2003年から浪板海岸でサーフショップを営んできました。
店の隣にはサーフボードの工房もあり、1から製作したり修理を請け負ったりもしています。


常連客は…
「愛着あるんだよね、やっぱり」


プロサーファー 杉本浩さん
「うれしい、大事にしてくれたら。板って相棒だから」


杉本さんが浪板海岸でサーフィンを始めたのは13歳の時。
修行のため19歳で渡米し、23歳でプロサーファーの資格を取得しています。


プロサーファー 杉本浩さん
「自分がサーフィンを始めた場所であり、仲間もいて、ここでずっと来たので。だからすごく大切な場所」


震災前から海水浴客やサーファーの間で人気が高かった浪板海岸。
地形の影響などから海に返す波がないように見える「片寄波」で知られ、年間の来場者数は3万人に上っていました。


しかし、11年前の東日本大震災がすべてを一変させました。
杉本さんのサーフショップも流されてしまい、津波と地盤沈下の影響で美しい砂浜は消えてしまいました。


プロサーファー 杉本浩さん
「ショックですよ。『大丈夫かな』というのが一番大きかった」


ショックを受けつつも、杉本さんは震災の3カ月後から砂浜の再生を目指し、地道な取り組みを始めました。
仲間を募り、月に1回のビーチクリーン活動を今までずっと続けてきました。


プロサーファー 杉本浩さん
「ガラスがすごかった。だから裸足で歩けない状態だったから、細かくガラスの破片をみんなで取ってもらって」


そして震災の5年後(2016年)、同じ場所にサーフショップを再建。
さらにこの年、地元の人たちとともに砂浜再生工事を求める署名活動を始めました。
町に提出した署名は2万1000人分に達しました。


プロサーファー 杉本浩さん(当時48歳)
「もっと人を呼べる場所になるので、早急にやってもらいたい」


杉本さんたちの熱意は町や県を動かしました。
2019年から砂浜の工事が始まり、しけの影響などで予定から9カ月遅れたものの2021年9月、ついに360メートル分の再生が完了しました。


そうして迎えた海開き。
久しぶりの海水浴客を迎えるため、杉本さんの店では津波で被災したレンタル用のサーフボードを再び使えるようにするなど準備を進めてきました。
そこにはこんな本音も…


プロサーファー 杉本浩さん
「忙しくなることが実は不安。人手が足りなくなるから。それがまた12年ぶりに来たということ」


この日は霧がかかりながらも時折日差しも降り注ぎ、多くの人が浪板海岸で過ごす夏のひと時を満喫していました。
杉本さんがこの12年、ずっと夢に描いていた光景です。


プロサーファー 杉本浩さん
「本当にみんなの力でできた砂浜。本当に汗と全部が入っている砂」


ようやく震災前の風景を取り戻した浪板海岸。
この砂浜の魅力をさらに広めることが杉本さんの新たな夢です。


プロサーファー 杉本浩さん
「ビーチの保全をしつつ、県内でも一番人の入りが良いビーチにしたい」